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工場の位置検知システムとは?|種類・選び方を解説
「あの治具、どこに置いたかわからない」「仕掛品が今どの工程にあるのか、探すのに毎回時間がかかる」——工場の生産現場で、こうした声を聞くことは少なくありません。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが「位置検知システム」です。本記事では、位置検知システムの基本的な仕組みから、工場で使われる主な技術の種類と特徴、導入のメリットと選び方までをまとめて解説します。
1. 位置検知システムとは
位置検知システムとは、工場や倉庫といった屋内空間で、ヒトやモノの位置をセンサーやタグなどの技術を使って自動的に把握する仕組みです。
カーナビやスマートフォンの地図アプリで使われるGPSは、衛星からの電波を受信して位置を測定する技術ですが、屋内や地下では衛星電波が遮られてしまうため、屋外のような精度で位置を測定することができません。そこで工場・倉庫などの屋内環境向けに開発されたのが、電波・音波・画像などを使って位置を測定する屋内測位システムです。
工場の現場では、この屋内測位の仕組みを使って、仕掛品・治具・什器といったモノの「位置管理」「所在管理」に取り組む動きが進んでいます。
2. 位置検知システムを導入するメリット
位置検知システムを導入することで、次のような効果が期待できます。
探し物・待ち時間の削減:仕掛品や工具、部品の置き場所をすぐに特定できるため、探す時間そのものを減らせます。特に多品種の治具を複数のラインで共有している現場や、同じ工具を工程間で使い回している現場では、探す・待つという行為の積み重ねが作業時間を圧迫しやすく、効果を実感しやすい傾向があります
モノの動き・滞留状況の見える化:仕掛品や治具の動きがデータとして可視化され、工程内で滞留している箇所を発見しやすくなります。どの工程の手前で仕掛品が長く止まっているかを数値で把握できるため、これまで勘や経験に頼っていたボトルネックの特定を、データに基づいて行えるようになります
保守・点検業務の効率化:設備や治工具の所在が明確になることで、点検・棚卸などの定型業務にかかる時間を短縮できます。点検対象が複数の工程・倉庫に分散している現場ほど、「まず探す」という前段階の手間が減る効果は大きくなります
3. 工場で使われる主な位置検知技術
位置検知に使われる技術にはいくつかの種類があり、それぞれ得意とする精度・範囲・コストが異なります。
*BLEビーコン*
Bluetooth Low Energy(BLE)を使った発信機(ビーコン)を天井や壁に設置し、電波強度をもとにおおよその位置を測定する方式です。低コストで導入しやすく、資材置き場や倉庫のゾーンごとの在庫確認など、部屋・エリア単位の把握で足りる用途に向いています。ただし精度は数メートル程度になる傾向があり、棚の中の細かい位置までは特定しにくい点には留意が必要です。
*RFID(パッシブ型・アクティブ型)*
工程の入口にゲート型のリーダーを設置し、通過する仕掛品や台車のICタグを一括で読み取る、といった使われ方が多い技術です。電池を持たない「パッシブ型」は数m程度の近距離での一括読み取りに向いており、電池を内蔵する「アクティブ型」はより広い範囲の通信に対応できます。
*UWB(Ultra Wide Band)*
フォークリフトや台車など、動き続けるモノの位置をより高い精度で追いたい場合に採用が進んでいる技術です。電波の到達時間差から位置を割り出す仕組みで、設置条件によって差はあるものの10cm〜数十cm程度の高い精度を実現しやすく、座標に近いレベルでの把握に向く一方、アンカー機器の設置・調整には相応の手間がかかります。
*超音波*
空調の効いた屋内で、部屋・ゾーン単位の精密な位置特定を行いたい場合に選ばれることがある方式です。音波の到達時間を利用して位置を測定しますが、風や温度など環境の影響を受けやすいため、屋外や気流の変化が大きい現場では精度が安定しにくい面があります。
*地磁気*
新たな発信機を設置しにくい既存の建屋に、追加設備をあまり増やさずに適用したい場合に検討されることがある方式です。建物内の磁場のわずかな乱れを位置情報として利用する仕組みで、事前に磁場データをマッピングする手間はかかりますが、発信機を新設しなくても運用できる点が特徴です。
*カメラ・画像認識*
防爆エリアや精密電子機器の近くなど、電波の使用に制約がある現場でも導入しやすいのがこの方式です。天井や壁に設置したカメラの映像を解析してモノやコードの位置を検知する仕組みで、タグの取り付けが不要、またはコードの貼付だけで運用できる場合が多く、電波を使わない分、電波環境の制約を受けにくい点も強みです。
*GPS(屋外・単独測位/RTK測位)*
屋外のヤードや広い敷地内で、コンテナや車両の位置を把握したい場合によく使われるのが、衛星からの電波を利用するGPSです。単独測位では数m〜数十mの誤差が出ますが、補正情報を使うRTK測位ではcm級の精度も可能とされています。
これらの技術は、精度・コスト・設置のしやすさに次のような傾向があります。
| 技術 | 精度の目安 | 対応する精度レベル | 導入コストの傾向 | 主な特徴 |
| BLEビーコン | 数m程度 | エリアレベル | 低い | 設置の自由度が高い |
| RFID(パッシブ) | 数m程度 | エリア〜ゾーンレベル | 低〜中 | 電池不要・一括読み取りが可能 |
| RFID(アクティブ) | 数m〜広範囲 | エリアレベル | 中 | 広範囲の通信に対応 |
| UWB | 10cm〜数十cm程度 | 座標レベル | 高い | 高精度だが調整に手間がかかる |
| 超音波 | 数cm〜数十cm | ゾーン〜座標レベル | 中 | 精密だが環境の影響を受けやすい |
| 地磁気 | 環境依存 | エリア〜ゾーンレベル | 中 | 追加発信機が不要 |
| カメラ・画像認識 | 環境依存〜数cm | ゾーン〜座標レベル | 環境依存 | タグレス運用や電波不使用が可能な場合がある |
| GPS(RTK測位) | cm級 | 座標レベル(屋外) | 中〜高 | 屋外の広範囲測位に強い |
※上表の数値は各技術を紹介する複数の公開情報をもとに整理した一般的な目安です。実際の精度・コストは、設置環境や機器構成によって変動します。
4. 必要な位置情報精度の考え方
上表の「対応する精度レベル」は、大きく次の3段階に整理できます。技術を選ぶ際は、精度の数値そのものよりも「自社の課題にどのレベルの精度が必要か」を考えることが重要です。
エリアレベル:「どのゾーン・どの部屋にあるか」という大まかな把握。ビーコンやRFIDの固定リーダーは、主にこのレベルの把握に使われます
ゾーン・棚単位レベル:「どの棚・どの区画にあるか」という、エリアより一段細かい把握。発信機やリーダーの設置密度を上げることで対応しやすくなります
座標レベル:「棚の中のどの位置にあるか」まで特定する、より詳細な把握。UWBや、カメラで映像内の座標を捉える画像認識は、このレベルの精度に対応しやすい技術です
「大まかな置き場所がわかれば十分」なのか、「棚の中のピンポイントな位置まで知りたい」のかによって、必要な技術・投資規模は大きく変わります。
5. 位置検知システムを選ぶときの5つのポイント
*ポイント1:必要な精度を明確にする*
前章で整理した「エリアレベル」「ゾーン単位」「座標レベル」のうち、自社の課題解決にどのレベルが必要かを最初に明確にします。過剰な精度を求めると投資が過大になり、逆に精度が不足すると結局探す手間が残ってしまいます。
*ポイント2:カバーする範囲を確認する*
対象となるエリアが工場内の一部の工程なのか、敷地全体なのかによって、必要な機器の数・システムの規模が変わります。目安として、対象範囲が広くなるほど機器1台あたりのコストが下がっても設置台数は増えるため、総額は対象範囲にほぼ比例して大きくなりやすい点は、投資判断の前提として押さえておくとよいでしょう。
*ポイント3:設置環境との相性を確認する*
金属棚・金属製の什器が多い環境では電波の反射・干渉が起こりやすく、電波を使う技術は事前の電波環境調査が有効です。一方、暗所や粉塵の多い環境ではカメラを使う画像認識の視認性に配慮が必要になる場合があります。
*ポイント4:運用・保守の手間を確認する*
電池式のビーコンやアクティブRFIDタグは、定期的な電池交換が運用に組み込まれます。電池切れの心配がない方式でも、機器の清掃・点検など、それぞれ異なる保守ポイントがあります。
*ポイント5:既存システム・機器との連携性を確認する*
すでに導入済みの在庫管理システムや、スマートフォン・タブレット・既設カメラなどの機器をどれだけ活用できるかによって、初期投資の規模が変わります。判断の目安として、既存の在庫管理システムにAPI連携の余地があるか、既設カメラがシステム側の求める解像度・設置角度を満たしているかを導入前に確認しておくと、後から機器を入れ替える手戻りを防ぎやすくなります。
6. 汎用カメラ×カメレオンコードの位置管理という選択肢
位置検知技術の一つである「カメラ・画像認識」の分野では、専用のコードとカメラを組み合わせて位置を把握する方式もあります。「いろあと Product Location」は、独自開発の2次元カラーバーコード「カメレオンコード」をカメラの映像から画像認識で読み取ることで、仕掛品・治具・什器の位置を座標レベルで把握できる仕組みです。
専用のリーダーではなくネットワークカメラを使う仕組みのため電波を発しない点が特徴で、防爆エリアや精密電子機器が密集した環境でも扱いやすい設計になっています。また、スマートフォン・タブレットや既設のカメラを活用できる場合が多く、専用機器を新たに用意しなくても運用を始めやすい点も特徴です。
まとめ
工場の位置検知システムには、BLEビーコン・RFID・UWB・超音波・地磁気・カメラ(画像認識)・GPSなど複数の技術があり、それぞれ精度・コスト・設置のしやすさが異なります。導入を検討する際は、「必要な精度」「カバー範囲」「設置環境との相性」「運用・保守の手間」「既存システムとの連携性」という5つのポイントで自社の課題を整理することが、技術選定の第一歩になります。
いろあとProduct Locationについてご検討・ご相談の方は、お気軽にお問合せ下さい。資料ダウンロード(無料)も受け付けています。
※本記事で触れた各技術の精度・費用感は、現場の環境・設備・機器構成によって異なります。導入検討にあたっては、個別の現場環境に応じた確認・検証をさせていただきます。